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読後の感想
なんだかすごく異世界のできごとのような、こんな世界もあっても良いような不思議な感覚を持ちました。いくつかのショートストーリーなので気軽に読めると思いました、最初の殺人出産が一番長かったです。
引用:殺人出産システムが海外から導入されたのは、私が生まれる前のことだ。
主人公の育子の姉、環は産み人と呼ばれる人で、10人産んだら1人殺してもいいというとんでもないシステムなのだが、それだけの犠牲を払ってくれたら、そこまで憎い誰かを殺しても良いというのは、この救いの制度が実はみんなの気持ちを救い、「いざとなれば殺せるから・・・・」というストッパーになるのではないかと考えました。
ただ、知らぬうちに人を傷つけ、ある日突然、「産み人に選ばれましたので、あなたは1ヶ月後に死にます」って言われることを恐れ、人とのコミュニケーションをとるのが怖くなるな、、、などと現実にこんなシステムが動き出すことを前提の思考を持ってしまいました。
引用:死は向こうから勝手にやってくるものだった
医療がここまで発達する前は、死は向こうから勝手にやってくるものだったという。楽でいいなあと思う。今はわざわぎ、人目を気にしてセンスのいい死に方を探しながら自分を葬らなくてはいけないのだから。
死というものがなくなって100年後の世界で、このショートストーリーの主人公の名前すら出てこない短さの短編。ここから考える死のない世界は、もしも私が生きていたら割と早めに申請するのではないかと思いました。
とはいえ、素敵な死に方100選とかそういった特集が組まれたり、映えを気にした死に方を選ぶなど、どこまでも軽くなる死。でもそれくらい軽い方が楽になれるのか、それとも現在のように病気など死はどうしようもないものとして恐れられる存在である方が良いのか、どちらが良いのかわかりません。
所感
ありそうで、なさそうな世界でもあり、そして絶対にないだろうなという世界のお話で、この村田沙耶香さんがいつもどんなことを考えて小説を書いているのか、とても興味が沸きました。

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