今回の本はこちら
1945わたしの満州脱出記 は2014年に出版されたかみかぜよ、何処にの普及版です。こちらはKindle版があります。大正生まれの91歳の女性が書かれた本です。
読後の感想
今の平和な日本で過ごせていて幸せ、この平和がずっと続いてほしいと心から思いました。
引用:何の労も要せずに、ただ同然で北方四島まで不法占拠してしまったのです。
日本とソ連が五年間の不可侵条約を締結したのは昭和十六年四月のことですが、まだ残り八カ月の有効期間が残っているにもかかわらず、アメリカと密約したソ連はこの条約を一方的に破棄して、突然奇襲を掛けて侵入してきました。その上、何の労も要せずに、ただ同然で北方四島まで不法占拠してしまったのです。
正直、北方四島についてはいろいろな発言があり、何が正しくて、何が間違っているのかがわかりません。でもこの文章を読むと著者の稲毛さんからみた時に、上記のような気持ちになったということはやはり北方四島は日本のものだったのだと思います。
引用:どれだけの子供が拉致されたのか知る由もありません
支那(現中国)では、昔から人さらいなどは平然と行われていたようです。そんな彼等にとって、これはまたとない絶好のチャンスでした。殊に男の子を欲しがっていました。彼等は、拉致に対して罪悪感など微塵もありませんから、拉致された親の心情などわかるはずもありません。この時、どれだけの子供が拉致されたのか知る由もありませんが、まさに目を覆うばかりの惨劇でした。
今、こういった書き方をすると差別的だとか、偏見に満ちているなどと言われるかもしれませんが、そのまま引用しました。
こういった議論をする時に、私たちは一人一人違う人間なのに、中国人は、日本人はなどと全体として判断することが、分断のスタートだと思います。きっと中国人にも日本人にも、良い人と悪い人はいるでしょうし、特にこういった混乱の最中では普段良い人でも悪人になってしまうこともあるのではないかと考えました。
引用:井戸に身を投げて死んだ
また露兵の婦女拉致が始まったのです。戦争はすでに終わっているはずなのに、まだこんな行為が公然と罷り通るとは……。いくら敗者の避けて通れぬ運命とはいえ、厳牲になる女性はいつの世も哀れなものです。これは、他人事では済まされません。
(中略)
欲朝。
出発の時、昨日拉致された三人の娘さんたちが、揃って井戸に身を投げて死んだと聞かされました。明日は我が身と身につまされる思いでした。
ここの部分、読んでいて辛かったです。すべての露兵が悪い人だとは思いませんが、実際にこういうことが起きていたという事実、これは日本兵にもどの国の兵士にも当てはまることだと思います。戦争というものは人の倫理観を壊してしまうものなのではないかと感じました。
引用:人としての倫理感といったものは、衣食住足りて初めて、自ずから出てくるもの
敗戦以来、我が身を守ることで精一杯の人々は、同情や慰めの言葉などかけてやる心の余裕など持っていなかったのです。そんな人としての倫理感といったものは、衣食住足りて初めて、自ずから出てくるものなのでしょう。
このシーンは多くの乗客が乗っている汽車から降りた時に、背中に背負っていた赤ちゃんが圧死しているお母さんがたくさんいて泣いているのですが、誰も声もかけないというシーンです。命の危険や飢餓の中で他者を思いやる余裕なんてないという状況、私は味わったことがありません。それは幸せなことですし、今後もそういう思いをする人が少ない世の中になってほしいです。
引用:二度とこんな愚かしい戦争だけは繰り返してはならないのです。
荒涼とした極集地帯の凍土の中に、全裸のまま放り込まれて眠る幾十万人のシベリア抑留者たちの悲惨な遺体の山。満洲の国境周辺で起きた開拓者たちの聞くも無残な集団自決。拉致、婦女暴行など数々の事件。その他さまざまな理由で帰国の夢を果せず、無念の思いを残して逝った大勢の人たち。どれ一つ取っても、何の罪もない戦争の犠牲者たちでした。それ等の人たちと比べて見たなら、我が家の出来事などは、わずか一片の不幸に過ぎないのかも知れません。とにかく二度とこんな愚かしい戦争だけは繰り返してはならないのです。
我が家の出来事などとご自身の体験を小さく書かれていますが、稲毛さんご家族が味わった大変なご苦労は読めば理解できます。もちろん、もっと悲惨な人もいたでしょうけれども、引揚者の中で苦労をされていない人はゼロでしょう。戦争をし、負けるということは、もうとんでもないことです。たとえ勝っても、その間の苦労、犠牲、その後の人生で抱えていくことになる闇など、戦争を始める上層部の人たちが本当に理解しているのか・・・戦争に関わった多くの国の人たちがその後も大変な人生を歩んだのだと思います。
所感
先日戦争ものを読んで色々と興味が湧き、こちらの本を手に取りました。読んでみて、平和を安穏と享受している私たちこそ、こういう本を読むことが必要だと思いました。こういう本を映画化となると色々な立場の人たちがいるのでエモーショナルになりすぎるリスクがあります。エモーショナルに愛国心を煽ることはそれ自体がとても危険なことです。
本を本のまま、著者の言葉のままに読むことが良いのではないでしょうか。こういった本を読んだ時に私が大事にしたいことは、これはこの人の視点、多くの事実の中のこの人の視点という意識を強く持ちながら読むことです。

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